iwatam's server guestbook

編集や削除のご要望がありましたら個別にやります。遠慮なくおっしゃって下さい。

感想をありがとうございます。興味深く読ませていただきました。

まず「平和」という言葉の意味についてです。
いささか言葉遊びになってしまいますが、あなたは「平和」というものをどういう意味だととらえていらっしゃいますか？「感性的な基準」とおっしゃっていますが、明確な定義はできないということでしょうか？それとも「自由であること」イコール「平和」なのでしょうか？
私がこのコラムで使っている「平和」の意味は、辞書通りの意味、すなわち「もめごとや対立、騒動などがないこと」「戦闘や戦争が行われていないこと」です。つきつめて言えば、おっしゃる通り「平和とは反乱のない状態である」という定義です。
そして辞書通りの意味を使う限り、平和の方が常にマシであるとは言えない、と言っているのです。
「平和に対していい意味だけを込めるのならいくらでも持ち上げられるし、ろくでもない意味を強調してこめるならそれはいくらでも貶められる」というのはその通りです。そしてあなたは「平和は平和でない状態に比べれば常にマシである」「平和はよい現実を言い表す言葉だ」とも言っています。つまり、あなたは平和にいい意味だけをこめています。そして、そういう言葉で「平和」という言葉をいくらでも持ち上げられるということはあなたのおっしゃる通りです。
私は平和が必ずしも良いとは言えないとは言っていますが、平和が必ず悪いとは言っていません。それどころか、「(平和の方がいいと）言っていることが間違いなのではない」と言っています。ですから、私はろくでもない意味だけを強調しているわけではありません。

人殺しの話に移ります。
残念ながら、あなたの言う「絶対化してしまいかえってバランスを欠く印象」というのがどんな印象なのかわかりません。どんな印象のことをいうのでしょうか？
私はこの問題に対して、あなたがおっしゃるように視点を並立させるべきだと思っています。すなわち「人殺しには良い面と悪い面がある」というようにです。
また、「良い面を絶対に見出しえないとはいえない」とおっしゃっておられますが、これは「絶対によくないとは言えない」というのと同じ意味ではないでしょうか？良い面が絶対に見出しえないことを「絶対に良くない」というのではありませんか？もしそうではないとおっしゃるのであれば、「絶対に良くない」というのはどういう意味なのでしょうか？

あなたの意見には私にとって納得できない箇所がいくつかあります。教えていただけると幸いです。

こんばんは。返信ありがとうございます。

>「感性的な基準」とおっしゃっていますが、明確な定義はできないということでしょうか？
>それとも「自由であること」イコール「平和」なのでしょうか？

　明確な定義は、ある時点で可能ですが（例えば、辞書の該当項目を読み上げればよい）、
　明確な定義を、確定的に下すことは不可能、と考えます。
　
　明確な定義を維持する　ア　必要性があり、イ　必要性がその場で自覚されているなら、
　その場では、明確な定義が維持可能、と考えています（「その場」は、必ずしも時間的・場所的に
　短かったり狭かったりするとは思っていませんが、短く狭いと考えた方が実態に即してると思います）。


　私は「平和」については、用法上、価値的によいと評価される事実状態に感性的に対応させられる
　場合が、一般的と考えています。
　辞書(http://jiten.www.infoseek.co.jp/Kokugo?pg=jiten_ktop.html&col=KO）をひいてみますと、

　　へいわ 0 【平和】 名・形動）[文]ナリ
　　(1)戦争もなく世の中が穏やかである・こと（さま）。 「平和な時代」「平和を守る」
　　(2)争いや心配事もなく穏やかである・こと（さま）。 「平和な家庭」「平和に暮らす」

　とありますが、私は「」内の用例に、北朝鮮の事実状態を対応させる人（用例）は、
　価値的な意識などを度外視して定義を下そうと試みたりしない限りは（感性的には）皆無だ（一般的でない）と
　指摘したわけです。つまり、

　　Ａ　一般的な用例・用法にあってない　
　　Ｂ　一般的な用例・用法は、辞書の定義に解消しきれるものではなく、感性的な用例上のずれによって
　　　　決まり続ける（今回の場合は、(1)戦争もなく、に、平和に対応させられる価値的なウェイトがなく、
　　　　むしろ、「穏やか」…(1)(2)であることにおかれて使われる、という辞書上の根拠もあげられます）
　　　　ため、その偏りを意識しないことは、無用の混乱を生む（混乱を意図的に引き起こそうとする人もいます）
　　　　
　ため、よくない（辞書に抽象されたところから演繹的に理解せずに、辞書に抽象されない用例上のニュアンスを
　考慮する限り、平和は、「常にマシ」である状態を指すものとして使われがちであり、そのように使う方が
　混乱がない）と考えたのです。

　北朝鮮の状態を「平和」に含めて、「平和は必ずしも良いとはいえない」というよりは、
　北朝鮮の状態を「平和」に含めずに、平和はそうでない状態よりはマシな状態を指すものとして、
　使う方が混乱がない、と言ったのです。平和の価値的な側面を意識して使うべきで、平和を事実状態を指す
　言葉として使うことは、価値的な側面（穏やか）を含めて使うのが一般的である用例に対応しておらず、
　混乱を招く、と指摘したのです。

　それから、私は、「ろくでもない意味を強調してこめるなら」としたのであり
　iwatamさんが「ろくでもない意味だけを強調した」とは、書いていません。

・私としては、私がiwatamさんの議論を問題にする限りでは、「平和」の意味に用例上価値的な偏りがあり、
　iwatamさんの下した定義が、それを考慮したものでない、と指摘できれば足りるので、
　明確な定義を下す必要はないと考えています。強いて言えば、先ほどの辞書の定義の読み方として、
　価値的側面・用例（穏やか）も意識するという立場を明確にします。

なぜ「平和」については、用法上、価値的に良いと評価される事実状態に感性的に対応させられる場合が一般的なのでしょうか？あなたが一般的だと思っているだけではないでしょうか？言葉に勝手に個人の感性をあてはめて、それがさも一般的であるかのように言うのは間違っています。
平和という言葉がいい意味で使われる事が多いのは、感性的に対応させられるというような抽象的な理由ではなく、実際にいい状態である事が多いからです。しかし、レアケースとして良くない状態であることもあります。

私は「平和には良い面も悪い面もある」と言っています。これこそが「価値的に偏りがない」という事なのではないでしょうか？「平和は常に良い」という意見の方が「価値的に偏りがある」状態ではないでしょうか？あなたの言う「価値的な偏り」というのは何なのかわからなくなってしまいました。

この問題は結局のところ言葉の定義の問題です。あなたは言葉の定義を確定的に下すことはできない、とおっしゃっています。ということは、「平和とは常にマシな状態を表す」という事を確定的に下すことは不可能ではないでしょうか。

最後に、「穏やか」というのは「のどかで静かなさま。何事もなく安らかなさま」という意味です。つまりは、心配事や困った事が何もないという意味です。ここで一つ疑問があります。心配事や困った事が何もなければそれは良い状態なのでしょうか？単に自分が良くない状態に置かれている事に気がつかないだけなのかもしれません。この場合、当人が困っていないからといって放っておいていいのでしょうか？
つまり、私は「穏やか」というのは必ずしも良い状態ばかりとは限らない、と言っているのです。

>なぜ「平和」については、用法上、価値的に良いと評価される事実状態に感性的に対応させられる場合が一般的
>なのでしょうか？あなたが一般的だと思っているだけではないでしょうか？言葉に勝手に個人の感性をあてはめて、
>それがさも一般的であるかのように言うのは間違っています。

>平和という言葉がいい意味で使われる事が多いのは、感性的に対応させられるというような抽象的な理由ではなく、
>実際にいい状態である事が多いからです。しかし、レアケースとして良くない状態であることもあります。

　「平和」と称される状態が「実際にいい状態であることが多い（裏から、いい状態でない場合がある）」と、
　どうして一般的に言えるのでしょうか？　それは、あなたが「実際にいい状態も悪い状態も含める」と
　思っているから、そう言えるだけではないでしょうか？
　言葉に勝手に個人の用法をあてはめて、それがさも一般的であるかのように言うのは間違っています。

　平和という言葉がいい意味で使われることが多いのは、実際にいい状態であることが多いという事実に
　基づいているからではなく、平和と称するとき、称される状態が、いいという感性的なイメージに
　対応させられる類のことであるのが一般的だからです。これは、平和と称して、そこに平和でない状態を含める
　レアケースがあることとは、別問題です（一般論だから）。

　　+ + +

　あなたの前段部分の論法は、正しくありません。あなたは、私と対話している事実のみから、
　「私が一般的だと思っているだけ」「ではないでしょうか？」と暗示的な文を書き、その流れで、
　あなた個人の反応を一般化しています（「個人の憶測をあてはめて」と、暗示文と同じ内容を直ちに結論して、
　「実際であるかのように言うのは間違っています」と、実際がどうかを問題とせずに結論している）。

　実際には、あなたが、あなたの「平和」の定義の一般性をいうために拠った「辞書」に、私も同じように基づいて
　定義を下し、そこに「穏やか」というニュアンスが記されており、また、平和には、戦争や反乱とは無関係である
　(2)の用法があること、そして、(1)(2)の項目それぞれに書かれた用例に、北朝鮮の状態が対応させられない
　程度には、平和へのあてはめ上の偏りが一般的に見られる、という事実を指摘したわけです。

　これは、「言葉に勝手に個人の感性をあてはめ」た議論とは言えません。



>私は「平和には良い面も悪い面もある」と言っています。これこそが「価値的に偏りがない」という事なのでは
>ないでしょうか？「平和は常に良い」という意見の方が「価値的に偏りがある」状態ではないでしょうか？
>あなたの言う「価値的な偏り」というのは何なのかわからなくなってしまいました。

・あなたが「平和には良い面も悪い面もある」と一般化するのは、あなたが「平和」を、広い「実際の状態」
　そのものを指すことに限定した用法をとることを、暗に前提しているからです。より根本的には、
　言葉が広い「実際の状態（世界）」そのものに対応する（または、させられうる、という立場をとっているからです。

　しかし、例えば、Ａが今ここで何かをしゃべったとして、そこで起きているのは、Ａの認識上の変化とＡの顔や
　顔の近くの物理的な変化であり、「（広い）実際の状態」そのものを認識した事実ではないわけです。
　「（広い）実際の状態」そのものの認識の正体とは、「実際」という印象・それに基づく対応関係全体を指す
　「用法」です（自分の身の回りでの経験を大きく超えた事実への認識（国際ニュース）や、そこから可能的に
　想定しうる事実（世界）に　対応させられる記号・イメージ（実際の状態））。

　つまり、あなたが依拠しようとしている、あなたが、あなたより広いと思っている基盤も、あなた個人の
　用法上・感性上の基盤に解消されるのです（ただ、私は、そうであることだけから、その条件下で
　なされた判断は、当然に特殊個別的でしかないのであり、一般性をその条件下で指摘するのは間違いだ、
　というような、早まった議論はしませんが）。ですから、平和であれ、「実際の状態」であれ、どんな言葉も、
　個々人が、個々人の総体的な世界像の中で、何らかの位置付けを与えられた記号・用法・イメージです。

・こうして、「実際の状態」というイメージも、「平和」というイメージも、用法上の問題と考えるなら、
　「平和」を「実際の状態」を指すものとする用法を一般的に前提して語ることに対しては、

　　価値的な言葉「穏やか」「よい」というニュアンスを含む（根拠：辞書）「平和」に、その言葉の
　　射程より広い「実際の状態」を、用法上対応させる根拠はない（平和・穏やかに「実際の状態」が対応する、
　　と言える根拠がない。もし言えるとするなら、実際には、その人「が」平和・穏やかに「実際の状態」を
　　対応「させている」のに、それを隠して「言葉に勝手に個人の感性をあてはめて、それがさも一般的
　　（実際の状態）であるかのように言」っていることになる）。

　と、批判できます。

・それから、あなたの議論には暗示文が多すぎます。


>この問題は結局のところ言葉の定義の問題です。あなたは言葉の定義を確定的に下すことはできない、と
>おっしゃっています。ということは、「平和とは常にマシな状態を表す」という事を確定的に下すことは
>不可能ではないでしょうか。

　私は「確定的に定義を下すという文脈で」「平和とは常にマシな状態を表す」とは述べていません。
　No.159の冒頭から明らかです。

>最後に、「穏やか」というのは「のどかで静かなさま。何事もなく安らかなさま」という意味です。
>つまりは、心配事や困った事が何もないという意味です。ここで一つ疑問があります。心配事や困った事が
>何もなければそれは良い状態なのでしょうか？単に自分が良くない状態に置かれている事に気がつかないだけ
>なのかもしれません。この場合、当人が困っていないからといって放っておいていいのでしょうか？
>つまり、私は「穏やか」というのは必ずしも良い状態ばかりとは限らない、と言っているのです。

　今は用法（ある時点でよいと判断した場合、それを言い表す言葉は何であるか）の話をしていたのであり、
　認識上の勘違いの話をしていたのではありません。認識上の勘違いにあわせて用法を決めるのは本末転倒です。
　例えば、ある行為が適法（違法でない）と考えていたとして、適法であるという判断が勘違いであったなら、
　適法であるとは、必ずしも適法である状態ばかりとは限らない事実を指す、と考えるのでしょうか。
　誰かがそれを認めるかどうかは別として、そのような用法が一般に受け入れられないことは明らかです。

1) 「平和」と称される状態が「いい状態でない場合がある」というのはどうして一般的に言えるのでしょうか
それは「平和とはいい状態の事である」という定義がどこにもないからです。あなたは「平和」という言葉に「穏やか」という言葉が入っているから「平和とはいい状態の事である」とおっしゃっておられますが、「穏やかとはいい状態の事である」という定義もまたありません。
そして、「いい状態である」という定義がない以上、「いい状態であるかもしれないし悪い状態であるかもしれない」と考えなければなりません。さらに、実際に悪い状態である例(北朝鮮の例)があるのですから、悪い状態もあると考えなくてはならないでしょう。

----
2) 北朝鮮は平和か？
北朝鮮の状態は、今の(1)(2)の用法のどちらにもあてはまっています。戦争もない(準備はしているみたいですが)し、争いも心配事もありません(偉大なる首領様がついていますから)。ほとんどの人は脱北しようという気すら起きず、あきらめたまま日々生活しています。
これに対して、「平和は今の北朝鮮の状態には対応させられない」という理由は何でしょうか？「平和というのはいい状態を表すのにしか使わないのだから」という理由を示すなら、「なぜ平和というのはいい状態を表すのにしか使わないのか」という理由を示してもらわないと納得できません。さらに、上記のように、「穏やかという言葉が入っているから」というなら「なぜ穏やかという言葉が入っているといい状態を表すのか」という事を示してもらえないと納得できません。

----
3) 平和はイメージ？
次の段落は言葉が難しすぎて私にはよく理解できなかったのですが、こういうことでしょうか？
解釈1)
平和というのは単なる受け取る側のイメージであり、実際の状態ではない。例えば「空は青い」という発言は誰にとってもイエスだが、「日本は平和だ」という発言は受け取る人によって答えが違う。「りんごはおいしい」というのと同じだ。
私が「北朝鮮は平和だ」と言うのは、単に私が思っているだけで、あなたが「北朝鮮は平和でない」というのも単にあなたが思っているだけだ。そもそも「平和だ」というのは「それぞれの人が勝手に思っている」ものなのだから、一般的にイエスやノーはつけられない。
そして、平和というのは良い事を表す言葉なのだから、「平和でかつ良くない状態」というのはあり得ない。例えば「青汁はまずい」に対して、青汁の好きな人が「いや、青汁はおいしい。だからまずいものの中にもおいしいものがある」というのは間違いだ。
という事なのでしょうか？
それとも
解釈2)
「平和」というのは量的な問題であり、「どこより平和だ」という事は言えても、イエスノーで答えられる問題ではない。例えば「象は重い」というのと同じだ。比較対象を置かなければどちらとも判断できない。
だから、「象は重い」に対して、「象は鯨よりも軽い」から「重いものにも軽いものがある」とは言えない。
という事でしょうか？
おそらく言っているのは前者だと思っているのですが、勝手な思い込みだといけないので2つ並べてみました。
どちらにしろ理解できます。
ただし、私は「北朝鮮は平和だ。しかし北朝鮮は良くない。だから平和は良くない事もある」と言っているわけではありません。「『平和は良い』という証明はどこにもないのだから、『平和だから良い』という論理展開は間違っている」と言っているのです。

----
4) すれ違いの原因
結局のところ、あなたの意見に対して納得できないのはただ一つ、「平和というのは良い状態を表す言葉だ」という事です。
「平和というのは悪い状態が無い事を表す言葉だ」というのなら納得ができます。なぜなら、辞書の定義を見ると「○○がない状態」と定義されているからです。「穏やか」も同様です。しかし、悪い状態がないイコール良い状態ではありません。

----
5) 一般論について
私は一般論はしていません。そして、一般論には興味はありません。「絶対」という言葉には「すべてのレアケースも含めて」という意味が入っています。だから「平和がよいというのは一般論としては正しいかもしれない(しおそらく正しい)が、だからといってすべてのレアケースについても正しいとは言えない」と言っているのです。
レアケースは別問題なのではありません。そここそが問題であり、一般論は別問題なのです。
さらに言うと、私は平和が良いか悪いかという話をしたいわけではありません。結論に至るまでの論理展開の話をしているのです。その論理展開には何かが抜けていませんか？という話をしています。そして私は結論には興味ありません。

---
それから、私は暗示文は使っていません。すべて疑問文です。「○○でしょうか？」と質問しているのです。それに対して勝手に暗示的効果を感じないで、素直にイエスかノーかを答えていただければ結構です。

●
>1)「平和」と称される状態が「いい状態でない場合がある」というのはどうして一般的に言えるのでしょうか
>それは「平和とはいい状態の事である」という定義がどこにもないからです。
>あなたは「平和」という言葉に「穏やか」という言葉が入っているから「平和とはいい状態の事である」と
>おっしゃっておられますが、「穏やかとはいい状態の事である」という定義もまたありません。

>「平和というのはいい状態を表すのにしか使わないのだから」という理由を示すなら、
>「なぜ平和というのはいい状態を表すのにしか使わないのか」という理由を示してもらわないと納得できません。
>さらに、上記のように、「穏やかという言葉が入っているから」というなら「なぜ穏やかという言葉が入っていると
>いい状態を表すのか」という事を示してもらえないと納得できません。

　・私は確定的な定義について問題にしているわけではない（原理的になしえないと考える）ことは、
　　すでに断ったとおりです。
　・穏やかとは、いい状態のことである、という定義がないのは当たり前です。いい、の方が広い意味を持っており、
　　穏やかは、いい状態のうちの、ある種の状態を指す言葉だからです。穏やか、をひいてみると、

　　　おだやか 2 【穏やか】 （形動）[文]ナリ〔古くは「おだひか」〕［派生］ ――さ(名)

　　　(1)静かで平穏無事なさま。やすらか。「―な海」「―な気候」「心中(しんちゆう)―でない」
　　　(2)落ち着いていておとなしいさま。「―な人柄」
　　　(3)やり方や考え方などが穏当であるさま。「―に話す」「―でないことを言う」

　　上のようですが、(1)から(3)の意味するところが「いい状態」を指している（そのような用法である）
　　ことは、明らかです。

　私は、平和→穏やかという言葉は、iwatamさんも依拠した、辞書の定義・用例に照らせば、一般にいい状態を
　表すように使われているから、そのように使う方が混乱がない、としたのです。例えば、ある行為が適法
　（違法でない）と考えていたとして、適法であるという判断が勘違いでありうるならば、適法であるとは、
　必ずしも適法である状態ばかりとは限らない事実を指す、という用法をとらないのと同じ理由です。

>そして、「いい状態である」という定義がない以上、「いい状態であるかもしれないし悪い状態であるかもしれない」と
>考えなければなりません。さらに、実際に悪い状態である例(北朝鮮の例)があるのですから、悪い状態もあると
>考えなくてはならないでしょう。

　上の見解は、「ある言葉に、現実の状態そのものが対応する、または、対応させられるという考えに基づいている」
　点を示し、そのような考えに根拠がないことを前のレスで示しました。

●
>2) 北朝鮮は平和か？
>北朝鮮の状態は、今の(1)(2)の用法のどちらにもあてはまっています。戦争もない(準備はしているみたいですが)し、
>争いも心配事もありません(偉大なる首領様がついていますから)。ほとんどの人は脱北しようという気すら起きず、
>あきらめたまま日々生活しています。

>これに対して、「平和は今の北朝鮮の状態には対応させられない」という理由は何でしょうか？

　北朝鮮では飢餓が深刻な問題になっているそうですが、そういう状態を「争いも心配事もない」「穏やか」な状態と
　形容するのでしょうか？　また、脱北する気が起きないなら「穏やか」であるとは言えません。
　
●
>3) 平和はイメージ？

　私の議論では、はっきり「平和」・「実際の状態」が並置されていたわけですが、なぜ平和のイメージ性だけを
　要約されるのか、（細かいところですが）疑問です。ここを見てらっしゃる方が、どの程度いるかわかりませんが…
　もしおられるなら、No.164の「あなたが「平和には良い面も悪い面もある」と一般化するのは」以下を、対照して
　判断してもらえるとありがたいです。

　それはおくとして、私が指摘したのは、平和が単なる受け取る側のイメージだ、ということではありません。

　iwatamさんが、「平和」と形容される状態には、いい場合もそうでない場合もある、とされたとき、
　その指摘は、「「（広い）実際の状態そのもの」を、言葉は指し示すか、または、言葉で指し示せる」ことを
　前提としているが、そうした考えには根拠がない、ということです。実際は、その前提は、平和をいいイメージに
　限定するのと同じ、用法的・感性的な基盤に解消される、という点です。iwatamさんは、実際の状態を、
　平和の用法の根拠として、個人（ここではリッケルト）が「いい状態を指す」とすることより、議論上客観的な
　根拠として据えているが、それは、「平和」を「実際の状態を指す」という、iwatamさんの用法上の主観的な選択と
　不可能な認識上の立場に依拠している、ということです。

　だから、適法と考えた状態が、実際は違法な状態であった場合、適法であるとすることが、適法でない事実状態
　をも指す、と用法上考えないのと同様に、平和であると考えた状態が、実際には平和でない、穏やかでない状態で
　あったなら、それは平和でなかった、穏やかでなかった、と言うべきであり、平和であるが好ましくない、とする
　用法は混乱しているだろう、と指摘したのです。

>ただし、私は「北朝鮮は平和だ。しかし北朝鮮は良くない。だから平和は良くない事もある」と言っている
>わけではありません。「『平和は良い』という証明はどこにもないのだから、『平和だから良い』という
>論理展開は間違っている」と言っているのです。

　平和だから良い、という論理展開などしてませんよ。私は、平和は良い状態を指すように使われる、と言った
　のであって、平和と形容されれば形容された事実状態を良いと証明したことになる、などとは言っていませんよ。
　というか、誰かそんなことを言った人がいるんですか？　平和とは一般的にいい状態だ、は、私は平和という
　状態を、一般的にいい状態を指すという意味で使う、であることは自明ですよね？　平和という言葉を
　私が使うことは、世界そのものだったり、ある地方そのものだったりするわけじゃないんですから。

●
>4) すれ違いの原因
>結局のところ、あなたの意見に対して納得できないのはただ一つ、「平和というのは良い状態を表す言葉だ」という事です。
>「平和というのは悪い状態が無い事を表す言葉だ」というのなら納得ができます。
>なぜなら、辞書の定義を見ると「○○がない状態」と定義されているからです。「穏やか」も同様です。
>しかし、悪い状態がないイコール良い状態ではありません。

　　へいわ 0 【平和】 名・形動）[文]ナリ
　　(1)戦争もなく世の中が穏やかである・こと（さま）。 「平和な時代」「平和を守る」
　　(2)争いや心配事もなく穏やかである・こと（さま）。 「平和な家庭」「平和に暮らす」

　　おだやか 2 【穏やか】 （形動）[文]ナリ〔古くは「おだひか」〕［派生］ ――さ(名)

　　(1)静かで平穏無事なさま。やすらか。「―な海」「―な気候」「心中(しんちゆう)―でない」
　　(2)落ち着いていておとなしいさま。「―な人柄」
　　(3)やり方や考え方などが穏当であるさま。「―に話す」「―でないことを言う」

　上の用例を見たときに、両者の意味が、ある事実状態のよい部分を形容するように使われているのは、
　明らかです。悪い状態が無いイコール良い状態ではない、は、その通りですが、再三述べたとおり、
　そのことは、平和である、とか、穏やかである、が、良い状態を指すように使われるという用法上の
　問題とは関係が有りません。


●
>5) 一般論について
>私は一般論はしていません。そして、一般論には興味はありません。「絶対」という言葉には
>「すべてのレアケースも含めて」という意味が入っています。
>だから「平和がよいというのは一般論としては正しいかもしれない(しおそらく正しい)が、
>だからといってすべてのレアケースについても正しいとは言えない」と言っているのです。
>レアケースは別問題なのではありません。そここそが問題であり、一般論は別問題なのです。
>さらに言うと、私は平和が良いか悪いかという話をしたいわけではありません。結論に至るまでの論理展開の話を
>しているのです。その論理展開には何かが抜けていませんか？という話をしています。そして私は結論には興味ありません。

　繰り返しますが、平和は状態そのものに対応しうるのではなくて、平和という用法です。それに、
　あなたが論理展開のつもりで話している内容は、事実状態の問題であり、論理展開の問題ではありません。
　平和（と形容される状態）がよい、というのは、一般論として正しいが、平和（と形容される状態）が
　全てよいとは言えない、と、あなたは言っているわけで、これは、論理ではなくて論理や形容に対応する
　事実がどうかの問題です。私がいう一般論は、平和と形容される状態は、平和な状態である、ではなくて、
　平和と形容されるとき、その形容される状態としては、よい状態が抽象的・具体的に想定されている、です。

　平和と形容した状態が、平和で無かったなら、それは、平和であるが悪かった、とする以外に、
　平和でなかった、とする解決もありえます。辞書によるなら、そちらの解決が一般的ですし、
　平和が純粋に世界や状態を指すと主張しないなら、その用法をとるのが適切なのは明らかです。

　具体的には、北朝鮮の状態（飢餓や統治）をさして、平和でも反乱の必要がある状態であり、良いとは限らない、
　平和に反する反乱が好ましい場合もある、という議論よりは、北朝鮮の状態（飢餓）は、そのまま放置するにせよ、
　反乱の必要を認めるにせよ、いずれにしても平和な状態ではない、の方が、日本語として適切な用例だろう、と
　言っているのです。


>それから、私は暗示文は使っていません。すべて疑問文です。「○○でしょうか？」と質問しているのです。
>それに対して勝手に暗示的効果を感じないで、素直にイエスかノーかを答えていただければ結構です。

　　>なぜ「平和」については、用法上、価値的に良いと評価される事実状態に感性的に対応させられる場合が一般的
　　>なのでしょうか？あなたが一般的だと思っているだけではないでしょうか？言葉に勝手に個人の感性をあてはめて、
　　>それがさも一般的であるかのように言うのは間違っています。

　　>私は「平和には良い面も悪い面もある」と言っています。これこそが「価値的に偏りがない」という事なのでは
　　>ないでしょうか？「平和は常に良い」という意見の方が「価値的に偏りがある」状態ではないでしょうか？
　　>あなたの言う「価値的な偏り」というのは何なのかわからなくなってしまいました。

　私は、あなたが導きたい結論を、疑問文の形で相手側に証明責任を転嫁しつつ、相手自身に判断不足ではないか、
　と「根拠無く」思わせるような文章（暗示文）を書くべきでない、としたのです。
　私が暗示的効果があると感じたか、あなたが暗示にかけるつもりがあったかを問題にしたのではありません。

今回の話は意見の相違ではなく単なるすれ違いである事はおわかりいただけたようなので、それについては別の回答でまとめてすることにします。価値観についての話も別の回答ですることにします。
それから、私の議論に関するスタンスは、「議論のしかた」( http://iwatam-server.dyndns.org/software/giron/giron/ )にまとめてありますので、もしまだご存知ないのでしたらお読みいただけると幸いです。

----
1) 穏やかはいい状態か
あなたは「穏やかの意味するところはいい状態であることは明らか」と言っています。そして私は、それは明らかではない、と言っているのです。
「穏やかの意味するところはいい状態ではない」とも「穏やかの意味するところはいい状態ではないこともある」と言っているわけでもありません。単に私はバカなのでそれが当たり前だと言われても理解できません、なぜ当たり前なのか教えて下さい、と言っているのです。
例えば、野心あふれる実業家が「俺は穏やかで平凡な暮らしには飽き飽きした。もっと輝いた波乱万丈の人生を送りたいんだ」と言った時、「穏やか」というのはいい意味ではないような気がするのですが、この場合の「穏やか」という言葉の使い方が間違っていますか？それともこの文章での「穏やか」というのはいい意味である、ということでしょうか？それとも何か他の理由でしょうか？

2) 北朝鮮は平和かその2
北朝鮮が平和であるかどうかは北朝鮮にいる本人達に聞いてみればいいでしょう。「あなたたちの国は平和ですか？」と。大方の人は「もちろん。偉大なる首領様のおかげで、私達は平和に暮らしています」と答えるでしょう。「心配事」や「穏やか」というのは人の心の状態を表すものですから、本人が「心配事はない」と主張するなら誰が何と言おうと心配事はないのです。
もちろん「そんな言葉は本心ではない。恐怖心から言わされているだけだ」と反論することでしょう。おそらくそうでしょう。しかし本当にそうだとは言い切れません。先に述べたように、本人の気持ちに本人以外の人が反論する事は不可能なのです。
つまり、「平和」という言葉に、争いがないとか戦争状態にないといった客観的な状態以外のものを含めると、「平和かどうか」という問いは証明不可能になってしまうのです。

まとめます。私の使っている「平和」の定義は「争いのある状態にないこと」という客観的なものです。それに対してあなたの定義は「穏やかで、いい状態」という主観的なものです。どちらの用法が正しいかについては私は興味はありません。それはどちらでもいい事です。ただし、あなたの言うように「平和」を主観的な意味にとると、私にはもう言える事は何もありません。

3)
ここは私の流儀を曲げて引用します。
<引用>
平和だから良い、という論理展開はしていませんよ。私は、平和は良い状態を指すように使われる、と言ったのであって、平和と形容されれば形容された事実状態を良いと証明した事になる、などとは言っていませんよ。というか、誰かそんなことを言った人がいるんですか？

私も「あなたが平和だから良いという論理展開をしている」とは言っていません。文字通り、私は「『平和だから良い』～」と主張していると言っているだけです。
で、そんなことを言っている人はいます。それは一部の反戦運動家です。彼らは戦争がなければ平和である、そして平和なのだから良い、と言っています。それはおかしい、と言っているわけなのです。

4)平和という言葉の一般性について
結局、問題の根幹は、「平和」という言葉に対してどちらの定義が一般的か、という話にすぎません。
私はそんな事はどうでもよいと主張します。一般的であろうとなかろうと私の主張は変わらないからです。
それに対してあなたは、私の言葉の定義は一般的ではなく、あなたの言葉の定義の方が一般的だと主張します。そして私に、あなたの定義は一般的でないからその言葉は使べきではないと言っています。だから、あなたがそう主張するなら、平和に対するあなたの定義の方が一般的だと証明する責任はあなたにあるわけです。
私は、私の定義の方があなたの定義より一般的だと言うつもりはまったくありません。あなたの定義の方に一般性があるという証明はなされていない、と言っているだけです。そして、そんな証明はしなくてもいい、と言っているのです。

----
最後の部分については、上記の「議論のしかた」に詳しく書きましたのでここでは省略します。

■この議論を見ている方へお願い

　・ぜひ、彼のコラム「絶対に戦争をしてはいけないか」と、今回の、彼と私の議論を読んでください。

　　（一応、最後に返したレス２つで、分かるようにしたつもりです）

　　私は、彼の「議論のしかた」を読むより、参考になると考えています（もちろん、彼の「議論のしかた」が

　　参考にならないというわけではありません。いろいろな意味で、参考になると思います）。

　　また、議論のしかたを記述上重視する者は、正しく議論をする者であるとは限らないということが、

　　よくわかります。今回のレスは、iwatamさん以外にも向けられています。よろしくお願いします。

　・iwatamさんがどう反応されるかわかりませんが、私は今回のやりとりが、「広く」公開されることを望みます。
　
■

１・今回の議論は、そもそも、iwatamさんがコラム中で述べられたことに端を発しています(No.151の引用を参照)。

２・私は、まず「見事なまでに統制され」「反乱分子は処刑」「反乱する気力なし」「奴隷」といった状態を
　　平和と形容された点がおかしいと考えました。なぜなら、平和には、用例上、感性的にいい状態を指す方向に
　　偏りがみられるからです（すでに示した「平和」「穏やか」の辞書の釈義と説明を参照・・・No.159
　　No.170の、1)4)、No.164）。
　　そして、実質的には、用例上の偏りを考慮しないことは、混乱を生じさせると考えました。具体的には、

　　　iwatam　北朝鮮は、体制が窮屈であるが、平和である。平和を乱す反乱がよい場合はある。平和がよいとは限らない。

　　とするより、

　　　リッケルト　北朝鮮は、体制が窮屈であり、飢餓が深刻であり、平和でない。反乱の必要は認められる。
　　　　　　　　　いずれにしても平和な状態ではない。

　　とする方が、平和の「用法として」適切であり、混乱が無い、と述べたのです（No.151結論他)。

　　重要なのは、私は用例上の偏りを指摘したのであり、平和＝よい、としたと要約されるような主張をしたわけ
　　ではないことです。つまり、

　　　①平和と称される事実状態が、現によい　とは、していない。
　　　②平和＝穏やか＝よい状態を指す　とも、していない。
　　　③平和には、用例上「よい状態」を指すような偏りがあり、それに照らせば、北朝鮮の状態を平和と
　　　　形容しないのが一般的だ、としたのです。根拠は、２の冒頭に示したレスに書いてあります。


３・私は、確定的に定義を下せるという立場はとっていません(No.159冒頭)、この点について、No.173でiwatamさんは、

　　　> 結局、問題の根幹は、「平和」という言葉に対してどちらの定義が一般的か、という話にすぎません。
　　　> 私はそんな事はどうでもよいと主張します。一般的であろうとなかろうと私の主張は変わらないからです。
　　　> それに対してあなたは、私の言葉の定義は一般的ではなく、あなたの言葉の定義の方が一般的だと主張します。
　　　> そして私に、あなたの定義は一般的でないからその言葉は使べきではないと言っています。だから、あなたが
　　　> そう主張するなら、平和に対するあなたの定義の方が一般的だと証明する責任はあなたにあるわけです。

　　とされました。しかし、私は、言葉の定義（ここでは定義が確定的なものとして想定されています→No.159）の
　　一般性　２②　を主張したのではありません。言葉へのあてはめに価値的な偏りがあり、北朝鮮の事実状態を
　　踏まえて平和にあてはめるならば、私のあてはめの方が用例・用法上一般的であり　２③、一般的な用例・用法を
　　とった方が混乱が少ないので、それを取ったほうがよい、と主張したのです（No.151）。
　　この意味での一般性の証明は、No.159、No.170で行っており、iwatamさんが、その一般性を否定するために
　　用いた論法や、反論に対しては、No.164「あなたが「平和には良い面も悪い面もある」と一般化するのは」以下、
　　No.170 3)以下、5)以下で、答えてあります。

　　そもそも、公開する文書の定義の一般性はどうでもよいと主張する、のは、非常におかしな態度です。

４・iwatamさんがとられた論法や、態度のおかしさについて、改めて指摘します。

　　No.164冒頭での指摘

　　　・認識論上の主観性を、主張上の主観性に直結させる論法
　　　・暗示文（それに対して、No.166末尾、さらに、No.170末尾、続けて、No.173末尾。
　　　　　　　　No.173冒頭から参照し、暗示で検索をかけましたが、ヒットしませんでした）

　　No.165中段で行った指摘

　　　・意味のない強調を伴う暗示「もう一度問います」
　　　・「皆絶句して」といった形容で、いかにも相手が判断停止しているかのように描写して、
　　　　議論の根拠・結論と無関係に、相手の判断の説得性を落とそうとする

　　・そろそろ結審？　というレスタイトルのつけ方（これは、相手を愚弄した態度です）
　　・問題の根源が見えてきました　というレスタイトルのつけ方
　　（上よりは微妙ですが、主体が誰かを考えれば、暗示文だと分かります。文頭に主体をつけてみれば
　　　もっとはっきりします。効果はないと思いますが、それは別問題です）

　　No.173（これはiwatamさんのレスです）

　　　>　まとめます。私の使っている「平和」の定義は「争いのある状態にないこと」という客観的なものです。
　　　>　それに対してあなたの定義は「穏やかで、いい状態」という主観的なものです。
　　　>　どちらの用法が正しいかについては私は興味はありません。それはどちらでもいい事です。
　　　>　ただし、あなたの言うように「平和」を主観的な意味にとると、私にはもう言える事は何もありません。

　　　　上の文章は、自分の定義を「客観的」、私の定義を「主観的」と対比しているに過ぎないことに、
　　　　注意してください。もちろん、それが、直ちにまずいとは出来ません。確かに上の文面では、
　　　　私の定義は「主観的」に見えますから。

　　　　しかし、
　　　　①これが現に私が述べたことであるか
　　　　②彼がなした対比は、そもそも正しく主観性・客観性を語れているか、が重要です。

　　　　①そもそも、「定義」として私の見解を理解すること自体が誤解であることは、すでに触れました。
　　　　　→No.159など。２、３参照
　　　　②彼が言う「客観性」の主観性については、
　　　　　No.164「あなたが「平和には良い面も悪い面もある」と一般化するのは」以下、
　　　　　No.170 3)以下、5)以下で、答えてあります。

　　　　　彼が「争いのある状態にないこと」と、私が引用した辞書の定義を無視したことは、主観的選択です。
　　　　　北朝鮮について、２・のようなあてはめをすることは、主観的選択です。
　　　　　
　　　　　　　へいわ 0 【平和】 名・形動）[文]ナリ
　　　　　　　(1)戦争もなく世の中が穏やかである・こと（さま）。 「平和な時代」「平和を守る」
　　　　　　　(2)争いや心配事もなく穏やかである・こと（さま）。 「平和な家庭」「平和に暮らす」
　　　　　　　　　　↑用例に基づく抽象（化）＝釈義、定義、意味　　　　↑用例
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　←
　　　　　　　　　　　　　　　　用例が持つ価値的な偏りが、釈義に反映「させられた」のであり、
　　　　　　　　　　　　　　　　釈義を断片的に抽出して演繹的に「客観性」を保つことは、主観的な選択である。
　　　　　　　　　　　　　　　　　参考：No.159中段Ｂ


　　　　　定義の客観性とは、定義内容の主観性・価値中立性で決まるのではありません。認識論上は、
　　　　　どの用例→抽象（化）も、根本的には主観的ですが、主観がどれだけ多く並立しているか、並立していると
　　　　　考えてよいか、が、「客観性（と称する実益のある）」問題です（辞書で与えられている字義通りの
　　　　　客観性は原理的に成立し得ない点については、先ほど②で触れた内容のとおりです）。

　　　　　結局、どちらの用例が、一般的かが「定義の客観性」の問題です。そして、あなたは、この問題には
　　　　　興味はないと言うでしょう。しかし、あなたがすでになした記述と、それへの私の批判は残ります。

　・No.173冒頭

　　　>今回の話は意見の相違ではなく単なるすれ違いである事はおわかりいただけたようなので、
　　　>それについては別の回答でまとめてすることにします。価値観についての話も別の回答ですることにします。

　　私は、No.171の最後で、

　　　> 正直、同感したことに率直に満足したと書いてもらえたのは嬉しかったし、こちらも満足しております。
　　　> 同感、としっかり書いておいて良かったです。（中略）
　　　> 意見の相違や、若干腑に落ちない点はありますが（お互い様でしょうね）、よい形で終わって良かったです。

　　と、はっきり書いてます。明らかに無視・強弁しています。


　・No.174冒頭
　　「私はあなたの反論の文章のアラを見せつけたいわけではありません。」
　　「私は、あなたの反論の文章のアラ探しをしたいわけではありません。」・・・比較してください。

　・他にもありますが、省略します。



５・結論として私が言いたいことを要約します。用法・用例（iwatamさんが言う、定義）を決定する段階での
　　操作上の主観性（言葉の対象へのあてはめ）を、定義の見かけ上の事実性によって隠して、
　　それを、読み手の価値的な議論・用例の認識に影響させようとする（平和を価値的に用いる用法を混乱させる）
　　ような議論は、不適切である。

　　事実認識に関する判断の客観性・価値中立性を標榜する議論は、不当であるか、信用できない。
　　（と言われれば、多くの場合「私は標榜していない」と答えます。ですから、しかた、を極めることも
　　　大切ですが、議論を直接参照することも（おそらく、その方が）大事です）

（カッコの番号はあなたの意見の項番と対応します）
2)
わかりました。つまりあなたは、「平和」とは良い状態を示す言葉である、とは言っていないわけですね。定義には「良い状態」というのは入っていないが、普通は良い状態を表すときにしか使わないよ、ということでしょうか？それならその通りだと思います。

3)
要するに、「北朝鮮は平和なんて普通言わないよね」ということでしょうか。それはその通りです。私も普通はこんなことは言わないと思います。
しかし、私は「普通こんなことは言わないけど、極端な話をすればこう言えないこともない」と言っているのです。もともと極端な話をしているのですから、普通でないことは承知の上です。
私は「一般的」という言葉を「いかなる場合であっても普遍的にそう言える」という意味で使いました。あなたの「一般的」という言葉は「レアケースは除外して、普通はこう言う」という意味ではありませんか？あなたの「一般的」の意味においては、私のコラムにおける言葉の使い方は一般的でないことを認めます。
そして、そういう意味では読者は混乱するでしょう。あえてそうしているのです。普段当たり前だと思っている事柄をじっくり考えてほしいからです。

4)
あなたが「暗示だ」「愚弄した」と考えるのは勝手ですが、私はそうではないと明言しているはずです。それは単なる被害妄想です。
もし私が「あなたが○○と言っている」と書いている内容が間違っていたら、ただ「私はそんなことは言っていない」と言っていただければ結構です。ただ、そのときに同じ説明を繰り返すだけでは、私はどこがどう間違っているのかがわかりません。私がどこを勘違いして間違ったことを言っているのかはわかるでしょうから、そこについて別の説明をしていただきたいのです。

なお私が示した定義である「争いのある状態にないこと」というのはあなたの引用した辞書の定義の(2)に書いてあります。省略はしていますが、無視しているわけではありません。「辞書の定義を無視した」というのは誤りです。

それから、あなたが「意見の相違がある」と書いているのに私が「意見の相違ではない」と書いたのが誤りかどうかについてです。あなたは私が言いたかったすべてのことに同意してくださいました。だから少なくとも私が言いたかったことについては意見の相違はありません。
私はあなたの意見が間違っているとは思っていません。だから私は意見の相違ではないと書いたのです。私の意見もあなたの意見もどちらも正しいと思っています。これは無視でも強弁でもなく、むしろあなたにとって喜ばしいことではないかと思うのですが。
あなたの意見は正しいが、あなたの意見は私の考えが間違っていると主張しているものではないという印象です。もしそれは間違いだとおっしゃるなら、きっと私の意見が正しく理解されていないのだと思います。そういう意味で「すれ違い」と書いたのです。

5)
要するに、「平和」の用例として「平和な家庭」「平和に暮らす」ではなく「北朝鮮は平和だ」「フセインはイラクの平和に貢献した」などと書くと、読者が「平和」という言葉の意味を取り違えてしまうかもしれない、ということでしょうか？
あなたの言っていることには同意します。確かにその可能性はあるでしょう。しかしそんなバカばかりを相手にしてはいられないのも事実です。（もちろん、あなたがバカだと言っているわけではありません）
私の文章を読んで（上記の意味で）混乱するならばおおいに結構です。混乱して、そして考えてほしいのです。どんな文章であっても多かれ少なかれ混乱を引き起こします。それが「人の意見を受け入れる」ということなのです。

あのコラムは平和についての議論をしているのではなく、議論についての議論をしているのです。（だから「議論のしかた」というカテゴリに入れてあります）
私は平和についての議論は興味もなく、するつもりはありません。大事なことはわかりますが、だからといってしなくてはならないわけではありませんから。

----
私は、あなたが「平和という言葉の意味が違う」と言っているのだと思っていました。あなたは「意味がまったく違っているとまでは言えないが、普通に使う言葉ではない」と言っているのでしょうか？それならあなたの言う通りであり、そんなことはわかっていて使っています、というのが私の答えです。
そして、あそこでは普通に使う言葉ではないような例を出す必要があったのです。なぜなら、私がそういう主張をしていると勘違いされる可能性があったからです。「北朝鮮は平和だ」と書いておけば、まさか私が本気でそう主張しているわけはないと思ってもらえると思ったからです。
繰り返しますが、私は「北朝鮮は平和である」と主張したいわけではありません。そして、「北朝鮮は平和である」という主張には偏りがあり、無理があり、普通には使われない表現だということはわかっています。そんな無理がある表現でも、定義だけを見ると導けてしまうでしょう？だから、定義だけじゃなくてちゃんと用例も見なくてはならない、と言っているのです。
あなたが「定義の問題ではなく用例の問題だ」というのはわかりますし、その意味ではあなたの言う通りだと思います。だからといって私の表現が否定されるわけではない、ということが言いたいだけです。

>残念ながら、あなたの言う「絶対化してしまいかえってバランスを欠く印象」というのがどんな印象なのかわかりません。
>どんな印象のことをいうのでしょうか？

　絶対化してしまいバランスを欠く、は、一件の事件を「人殺し」という呼称を付して（今回の場合は）肯定的に
　評価する記述を行うことが、一件の事件中の個別の事実を細かく見ていく視点を与えない効果がある（＝絶対化）
　点を指してます。これは、「（一件の）人殺し」としてくくられる事実を単位としてよい面・わるい面を判断する
　ことを前提とした、＜「人殺しは絶対にいけない」というのも間違いなのだ。＞　という記述に向けられたものです。
　「人殺し（としてくくられる事実）には、よい面と悪い面がある」に対しては、今回のレスで触れたような問題が
　ありますが、絶対化している印象は受けません。

>私はこの問題に対して、あなたがおっしゃるように視点を並立させるべきだと思っています。
>すなわち「人殺しには良い面と悪い面がある」というようにです。
>また、「良い面を絶対に見出しえないとはいえない」とおっしゃっておられますが、
>これは「絶対によくないとは言えない」というのと同じ意味ではないでしょうか？
>良い面が絶対に見出しえないことを「絶対に良くない」というのではありませんか？
>もしそうではないとおっしゃるのであれば、「絶対に良くない」というのはどういう意味なのでしょうか？

　iwatamさんの文章では、正確に視点が並立させられていません。
　「人殺し」と抽象される事実に、良い面と悪い面が含まれるとして、その抽象される事実で正当化されているのは、
　「人殺し＝人を死なせることに対する評価」ではありません。

　例えば、他の人の命（自国民）を守るために、戦争で人殺しをした、であれば、
　それは「他の人の命を守ること」が、良い面であり、これは、「人殺し」を正当化したことではありません。
　これは、家族の生活（ひいては命）を助けるために、強盗をした例や、自動車で人をはねた場合などもあてはめて
　比較して考えれば、分かると思います。

　そこでは、加害事実が正当化されていないのに、記述上加害事実が正当化されることになっています
　（本当は命やお金があることが正当化されたのにです）。過失であれば、過失があった点だけが悪い面
　として考慮され、死の結果については評価されていないことが分かります（実際には、このような間違いを
　犯す人はいませんが）。

　殺される状況・盗まれる状況をイメージすると、殺し・盗みの結果が正当化できるかについて不問にしている、
　殺人・強盗を扱うような記述でありながら、実際には「ある行為は「選択されうる」、選択された場合、
　そこでは、別の利益を肯定しうる、だから、選択されうる行為によって呼称される、選択されうる行為を含む
　事実全体は肯定しうる」と、複数の問題を混同して判断していることが分かります。戦争を全体的に評価する
　ことも同じ問題を含みます。

　ですから、
　　
　　戦争や人殺しがなされた場合、例えば殺人などの破壊に着目するなら、そこには、絶対に
　　よくない面がある。しかし、戦争や人殺しに「伴う」、よい面を絶対に見出しえない、
　　とまでは言えない。

　「伴う」なんです。よい面が伴う場合はありますが、殺される事実は、少なくとも本人、そして遺族にいろいろな
　意味で（可能性の喪失、痛覚、精神的・経済的損害）引き受けられたわけで、それを指して「人殺しには絶対に
　よくない面がある」としたのです。より細かく言い換えると、

　　いわゆる「人殺し」は殺人という結果に着目するなら、絶対によくない。殺人という結果に着目しないなら、
　　他の面に応じてよいといえるかもしれないが、それは殺人について判断したことではない。
　　「人殺し」の字義は、殺人を含むので、「人殺し」によい面がある、と語るのは適切でない。

　となります。

あなたは、私の論法を次のように解説しています。
1) ある行為は選択されうる (つまり、人を殺すことができる、ということでしょうか?)
2) その場合、別の利益を肯定しうる (つまり、その結果命が助かる事もある)
3) だからその時に限ってその事実は肯定しうる
これはまったくその通りです。で、これのどこで複数の問題を混同しているのでしょうか。複数の問題というのは何と何でしょうか？

----
「人殺しは絶対によくない面がある」というのは、「人殺しは絶対によくない」というのとは違います。前者は「悪い側面が常に存在する」という事であって、後者は「良い側面は存在しない」という事だからです。実際には良い側面も悪い側面もあります。だから「人殺しは絶対によくない面がある」というのはその通りだと思いますが、だからといって「人殺しは絶対によくないというのは間違い」という発言を否定することにはなりません。

----
本当に人殺しというのは良くない事なのでしょうか？この問いは一時期話題になりました。そして話題になった割には、皆絶句して「そんなの当たり前じゃないか」で済ませてしまっているように思います。もう一度問います。なぜ人殺しは絶対に良くない事なのでしょうか？
そして、その理由がどんなものであれ、例えば「他人の命を守る」という良い側面と同列に置いてはいけない理由はあるでしょうか？

>あなたは、私の論法を次のように解説しています。
>1) ある行為は選択されうる (つまり、人を殺すことができる、ということでしょうか?)
>2) その場合、別の利益を肯定しうる (つまり、その結果命が助かる事もある)
>3) だからその時に限ってその事実は肯定しうる
>これはまったくその通りです。で、これのどこで複数の問題を混同しているのでしょうか。
>複数の問題というのは何と何でしょうか？

　1)・ある行為が選択されうる、とするとき、ある行為を向けられた側について考察するかどうかについて、
　　　議論せずに議論から排除している。

　　・また、ある行為が可能かどうかを考えるとき、通常は、結果が生じる以前の段階の可能性を考えるが、
　　　なぜか、殺人に関しては、当然に結果が起きた時点を可能性の判断の根拠にしている（論者が多い。
　　　iwatamさんが、そうであるかは分かりません）

　　・さらに、1)を、「殺してはいけない」の根拠を問題とするときに持ってくることで、ある時点で殺す・
　　　殺してしまう行為と、選択される・されない関係として当然に結びつくはずの
　　　「殺さない・殺すつもりがない」根拠を考える観点を失わせる効果がある

　　　（ある行為がが選択されない根拠には、ある行為がいけないからである、以外に、ある行為が選択されない
　　　　積極的・消極的根拠が別にありうる（実際、この点を指摘すれば、1)の議論をする論者も、その点に
　　　　ついて認める）のに、いけないわけではない場合以外は、ある行為が他の行為と同じ程度に、端的に
　　　　選択され、結果するものとして、イメージさせる効果がある。この点について、議論の余地を残さない
　　　　効果をあげてしまっている）。
　　
　　・2)3)の結論は、そもそも「人殺し」という字義に対応する問題を扱っていない（論点はずれ）。

　・「人殺し　という字義に対応する、実際の死の結果に対応する価値判断」と異なる判断内容（別の利益の肯定）を、
　　「人殺し　という字義に対応する行為」が、異なる判断内容と因果的関連があるという事実のみで、「人殺し」
　　という記号に対応させてよいかが不問とされているが、これは明らかに適切でない。

　　例えば、泥棒すると（Ａの手持ちの）お金が増えるから、（Ｂから）泥棒してもよい、は、適切でない。
　　これは、お金が増えるからいい、と言っているのであり、泥棒がいい、と正当化できたことではない。

>「人殺しは絶対によくない面がある」というのは、「人殺しは絶対によくない」というのとは違います。
>前者は「悪い側面が常に存在する」という事であって、後者は「良い側面は存在しない」という事だからです。
>実際には良い側面も悪い側面もあります。だから「人殺しは絶対によくない面がある」というのはその通りだと
>思いますが、だからといって「人殺しは絶対によくないというのは間違い」という発言を否定することにはなりません。

　「人殺し」に対応させる意味内容を厳密に考えると、あなたがいう「人殺し」には、人殺しの以外の論点（別の利益）が
　混同させられており、その判断によって「人殺し」によい面があるとしてしまっている、これは、「人殺し」の字義に
　対応させられる判断ではない、ということを、すでに指摘しました。

　人殺しに、人殺し以外の事実状態を意味・用例上こめて、その事実状態を肯定できることを根拠に、
　人殺しを肯定するのは、論法として明らかに不適切です。ですから、あなたの批判は間違いです。　　

>本当に人殺しというのは良くない事なのでしょうか？ この問いは一時期話題になりました。
>そして話題になった割には、皆絶句して「そんなの当たり前じゃないか」で済ませてしまっているように思います。
>もう一度問います。なぜ人殺しは絶対に良くない事なのでしょうか？

>そして、その理由がどんなものであれ、例えば「他人の命を守る」という良い側面と同列に置いてはいけない
>理由はあるでしょうか？

・　人殺しが絶対に良くない事だと言える（用法上、そのように構成してよい）理由は、「殺される側が失う利益に
　ついて、正確に判断を下し、その判断を言葉の用法に適切に対応させるなら」自明のことです。
　殺される側が失う利益については、No.160で「殺される事実は、少なくとも本人、そして遺族にいろいろな意味で
　（可能性の喪失、痛覚、精神的・経済的損害）引き受けられた」と、述べました。言葉の用法に適切に対応させる、
　についても、前のレスで触れましたが、今回のレスでさらに詳しく説明しました。

　あなたは、各自Ｂ・Ｃ・Ｄ・・・は、彼らにとっての他人Ａが死んでも、Ａが死んだことで受ける不利益をＢ以下は
　受けないから、他の利益と比較してＢ・Ｃ・Ｄ・・・は、Ａの死を選択しうる、という別の（先の）論点に
　ついて議論してしまっているのです。

　今は、他人Ａが死んでも、の、他人Ａが、自分のこととしてどう判断するか、という話なはずです
　人殺しの可否についての判断だから、殺された人の判断を抜きに語れないし、殺された事実を文字通り
　引き受けたのは、殺された人だけだから、それについて判断しなければ、殺しについて判断したことにはなりません。
　他者への侵害（例えば人殺し）が手段としてありえないか、他者への侵害が起きた周りの人が平気で、
　そこで別の利益に目を向けられるか、そうした態度に賛意が向けられうるかは、「人殺し」という行為を
　要素として含みうる、別の論点です（すでに書いたとおり、強盗や過失殺を人殺しのところにあてはめて考えて
　みてください）。

・「もう一度問います」のような、意味のない強調を伴う暗示を用いて議論を有利に進めようとするのは止めて下さい。

・「皆絶句して」といった形容で、いかにも相手が判断停止しているかのように描写して、議論の根拠・結論と無関係に
　相手の判断の説得性を落とそうとされているようですが、これは、議論に対する態度の一般論であり、今回の議論とは
　何の関係もない記述です（私はそういう態度をとっていませんから、私へのレスとして上のようなことを書くのは
　無意味です）。また、「皆」が根拠を述べなかったことは、私が根拠を述べなかったことではありません。

　それから、根拠が述べられていないからといって、結論が間違っているとは限りません（議論としては間違って
　いるかもしれませんが）。私から見れば、あなた「も」言葉の用法に対する批判的検討を欠いた「そんなの当たり前
　じゃないか」的な判断をされているように見えます。別の利益が選択されるんだったら、別の利益を得る手段として
　殺人が肯定され「う」るのは、「当たり前」だろう、と。

　　肯定され「う」る・・・iwatamさんが書かれた、価値相対主義についての文章を、自身でよく検討されると
　　いいと思います。私は、こちらの文章で言おうとしている内容は、よいと考えます
　　（ただ、価値相対主義が自己矛盾だ、という、文中で出された結論には、議論があるところです。手短に言えば、
　　　＜価値相対主義＞は、価値相対主義や価値絶対主義をとることをメタ的に相対化する視点のことを言うので、
　　　＜価値相対主義＞をとることは、価値相対主義を絶対化することではない。むしろ、価値相対主義を絶対化
　　　するのは、＜価値絶対主義＞である、と、反論されます。
　　　iwatamさんが例示した「絶対的に正しいという事は何一つない」という事が絶対的に正しいと信じている、は、
　　　＜価値絶対主義＞です）。

　一般の人が「当たり前」とするのは、iwatamさんの結論「人殺しにはいい面もある」に、抵抗を覚えるが、
　どう検討・批判していいか分からないから、強く結論を言っておこう、という便宜的な面もあると思いますよ
　（仮にそうだとしても、褒められた対応ではないですから、そういう意味ではiwatamさんに同感です）。

　次のレスを見て、これ以上は書く意味がないと判断した場合は、短いレスで終わりとさせてもらいます。
　その点について、先にお詫びしておきます。

+ + +

　ひとつ大きいミスがありました。前回のレスの最後のまとめの部分、「人殺し」の字義は殺人を含む、とありますが、
　これは正しくは「人殺し」の字義は殺人を意味する、です。
　どうもすみません。

上の「平和について」の話と論点がかぶる所は省略します。殺人についても、殺人がいいか悪いかについては私は興味がありません。論理展開についての話をしています。

----
1) 被害者側について
つまり、「殺人は良いか悪いか」という話をする時に、多くの人は加害者側の話しかしていない。被害者側にとって良いか悪いかも考えなさい、ということでしょうか？
それはその通りです。確かに被害者の話はしていません。

これは「行動を選択した人にとって利益のある事＝良い事」という(暗黙の)定義によるものです。この定義が正しいかどうかについては大いに議論の余地があると思います。ただ、私個人的としてはこの定義以外に「良い事」に対する明確な定義を知りません。もしもっと良い定義があれば教えていただきたいと思います。
もし「良い事」に対して上の定義を採用するなら、被害者の損害については「回り回って自分の損害になる」という事、つまり結局は自分の利益にはならないという事を証明しない限り考える事はできません。
念のため付け足しておきますが、私は「被害者の損害は考えなくていい」と言っているわけではありません。「被害者の損害を考えるなら、被害者の損害は自分の損害である事を証明しなければならない」と言っています。私はその証明はやってはいませんし、するつもりもありませんし、できないと言うつもりもありません(おそらくできると思っています)。それは、「人殺しはいいか悪いか」という問題については興味がないからです。繰り返しで恐縮ですが、私は証明過程を問題にしているのであり、結果は問題にしていないからです。

2) 選択
つまり、「人殺しが良いか悪いか」という事と同時に「人を殺さない事は良いか悪いか」という事も考えなければならない、そして「なぜ殺さないより殺した方がいいのか」を説明しないといけない、ということでしょうか。
これは、「人殺しは良いか悪いか」という話をした時に暗黙の前提として入っています。「良い」「悪い」というのは比較問題であって、比較対象はそれをしなかった時に対してです。つまり、「人殺しは良いか悪いか」というのは「人殺しはそれをしなかった場合と比べて良いか悪いか」という問いです。

3) 泥棒の例について
「泥棒するとお金が増えるから泥棒してもよい」というのが適切でないのは、お金が増えるメリットだけを考えていて、捕まるリスクや公共に対して害をなすデメリットを考えていないからです。
もし泥棒をする事に対してデメリットが何もなければ、その場合には泥棒は良い事です。(例えば側溝に落ちている10円玉を着服する、という行為です)
「泥棒」という言葉も「人殺し」という言葉も、単なる現象を表す言葉であって、字義に対応する価値判断は存在しないのです。

4) 人殺しは絶対に良くないか
「殺される側が失う利益」があるから人殺しは良くない、というお話でしたが、ということは失う利益がなければ人殺しはいいのでしょうか？
その論法によると、もし本人も死にたがっており、遺族もみな「あんなオヤジは早く死んでほしい」と思っていた場合には、人殺しは良いということになります。これは「絶対」という言葉と矛盾します。

5) 殺人が肯定され「う」るのは当たり前か
「殺人が肯定されるケースも必ずある」という意味で「殺人が肯定されうる」とは言っていませんし、考えるつもりもありません。
私は「殺人が肯定されるという証明も否定されるという証明もない時点では、殺人は肯定される可能性も否定される可能性もある」という意味で使っています。これについては納得いただけますでしょうか？必要なら証明を試みますが長くなりそうなので。

6) ここが核心
繰り返しになるかもしれませんが、私は「殺人が肯定される」とは言っていません。殺人を否定するには理由が必要だ、と言っているのです。私の「当たり前」に抵抗を覚えるがどう検討していいかわからないのに強く結論を言ってはいけない、と言っているのです。
つきつめると、私の言いたい事は上の事だけです。そしてそれ以外の事は何も言っていません。ここは同感だと言ってくださったので満足しています。

7) 「間違い」について
私は「○○は間違いだ」ではなく「○○というのは間違いだ」と言っています。○○を否定しているのではなく、「○○という」行為を否定しています。「いう」というのは漢字で「言う」と書いた方がよかったかと反省しています。
つまりは○○の是非を問題にしているわけではなく「○○と言う」論拠のあるなしを問題にしているのです。

●
>上の「平和について」の話と論点がかぶる所は省略します。殺人についても、殺人がいいか悪いかについては
>私は興味がありません。論理展開についての話をしています。

　殺人＝「人殺し」の是非について正面から問題にする内容を書いていたのに
　（No.162「実際には良い側面も悪い側面もあります。」)、その内容にあなたが興味があるかどうか、
　という点に一方的に話をずらし、その観点から、論理展開についての話をしてるだけだ、とするのは、
　一貫性に欠けた態度ですよ（ただ、6)に書いたとおり、意図には納得できました）。

　それと、以下の要約ですが、項目とそちらの要約でよしとされているようですが、
　実際にどこに対応しているかについて、無用の推測の必要が生じ、混乱の原因になりますので、
　短くでもいいですから、原文を引用してください。

●
>1) 被害者側について
>つまり、「殺人は良いか悪いか」という話をする時に、多くの人は加害者側の話しかしていない。
>被害者側にとって良いか悪いかも考えなさい、ということでしょうか？
>それはその通りです。確かに被害者の話はしていません。

　細かい話ですが、私は「考えなさい」という命令口調で多くの人に対して指示したわけではないので、
　そのような要約をするのはやめてください。「考えるべきだ」としてください。印象が違うことは
　あなた自身、承知のはずだと思います。

　私の考えでは、あなたが言う、「被害者の話をすること」が、殺人の是非の話をすることです。
　加害者の話をすることは、加害者の利益について話すことであり、殺人という手段がもたらす結果についての
　是非を話すことではないからです。加害者の事情ゆえに被害者側の不利益を肯定しうるか論ずること、は、
　殺人の是非を論ずることではありません。これについては、すでに、強盗・過失殺の判断を例としてあげて
　詳しく説明しました。


>これは「行動を選択した人にとって利益のある事＝良い事」という(暗黙の)定義によるものです。
>この定義が正しいかどうかについては大いに議論の余地があると思います。
>ただ、私個人的としてはこの定義以外に「良い事」に対する明確な定義を知りません。
>もしもっと良い定義があれば教えていただきたいと思います。

　人間は、ある行動と常に能動的に関わるわけではありません（人間は複数いますから）ので、
　人間が、ある行動と受動的に関わった場合についても、利益判断をすることは当然認められます。
　危害を加えられたことについても、利益判断が可能なのは自明です。
　むしろ、あなたが行動を選択することに限定する根拠が不明です。良いは、行動のみを形容するように
　使われないのは自明だからです。


>念のため付け足しておきますが、私は「被害者の損害は考えなくていい」と言っているわけではありません。
>「被害者の損害を考えるなら、被害者の損害は自分の損害である事を証明しなければならない」と言っています。
>私はその証明はやってはいませんし、するつもりもありませんし、できないと言うつもりもありません
>(おそらくできると思っています)。それは、「人殺しはいいか悪いか」という問題については興味がないからです。
>繰り返しで恐縮ですが、私は証明過程を問題にしているのであり、結果は問題にしていないからです。

　すでに述べたとおり、あなたは、その考えである限り、「人殺し」の是非を扱っていることになっていません。
　過去のレスを参照してください。

●
>2) 選択
>つまり、「人殺しが良いか悪いか」という事と同時に「人を殺さない事は良いか悪いか」という事も考えなければ
>ならない、そして「なぜ殺さないより殺した方がいいのか」を説明しないといけない、ということでしょうか。
>これは、「人殺しは良いか悪いか」という話をした時に暗黙の前提として入っています。「良い」「悪い」という
>のは比較問題であって、比較対象はそれをしなかった時に対してです。つまり、「人殺しは良いか悪いか」という
>のは「人殺しはそれをしなかった場合と比べて良いか悪いか」という問いです。

　これは、No.165の 1)に対応したレスでしょうか？　これについては、そちらを検討してください。
　選択、は、殺してはいけない、が、死の結果に対する（被害者・加害者・部外者それぞれがなしうる）評価を指し、
　殺す・殺さない選択を考える際の一つの要素として位置付ける際に、持ち出された視点です（加害者も、被害者を
　殺してはいけないという判断をなしえます）。

●
>3) 泥棒の例について
>「泥棒するとお金が増えるから泥棒してもよい」というのが適切でないのは、お金が増えるメリットだけを考えていて、
>捕まるリスクや公共に対して害をなすデメリットを考えていないからです。
>もし泥棒をする事に対してデメリットが何もなければ、その場合には泥棒は良い事です。
>(例えば側溝に落ちている10円玉を着服する、という行為です)
>「泥棒」という言葉も「人殺し」という言葉も、単なる現象を表す言葉であって、字義に対応する価値判断は
>存在しないのです。

　上は、泥棒や人殺しに事実状態を対応させる段階で、問題のない行為を対応させるから、字義に価値判断を
　対応させるのが困難になる実例に過ぎません。例えば、10円を着服するのは、泥棒の典型例として考えられていません。
　着服は、刑法上「窃盗」ではなく「占有離脱物横領」として軽く処罰されるに過ぎません。また、良いか悪いかを
　刑法上の違法性判断を基準とする用法は、広く行われていますが、それによれば、あなたがあげた着服する行為は
　違法ですから、単純に「＜泥棒（占有離脱物横領）＞は良い」とは言い難いです。そんなことを言う人も少ないと
　思われます。

　それから、私は字義に価値判断が対応する、とは述べていません。字義に適切に事実状態を対応させるなら、
　その事実状態に、特定の価値判断（悪い）を、一般的に対応させることができる、と述べたのです。

●
>4) 人殺しは絶対に良くないか
>「殺される側が失う利益」があるから人殺しは良くない、というお話でしたが、ということは失う利益がなければ
>人殺しはいいのでしょうか？
>その論法によると、もし本人も死にたがっており、遺族もみな「あんなオヤジは早く死んでほしい」と思っていた
>場合には、人殺しは良いということになります。これは「絶対」という言葉と矛盾します。

・本人が死にたがっている、は、結果としての死をある時点で志向しているということを指しますが、これは、
　他人に殺されてもいい、ということを意味しません。
・また、その後の時点で相変わらず志向していることを保証しません。
・さらに、仮に殺される時点で死にたがっていたとしても、死の結果に伴う痛覚や可能性が失われることについて、
　全面的に良いと判断するのは困難です（本人が可能性を失われることを了解していれば「よい」、という考え方が
　ありますが、これは正しくありません。なぜなら、悪いけれども、他にも悪いという評価を向けうる事情があるから、
　止むをえずある選択をした、場合であっても、選択されたのは、やはり悪い状態だからです。相対的にマシ
　であることを「良い」と形容するのは、その選択した人間の意思を反映した表現とは言い難いです）

・また、あんなオヤジは早く死んでほしい、は、オヤジがいなくなると遺族側に利益がある、ということであり、
　オヤジ自身の不利益ではありません（引用中で、「殺される側が失う利益」と書き始めてられてますよね）。
　だから、遺族の意図は無関係です。本人が死にたがっていたとしても、遺族側は本人が死ぬことが都合がいい
　という利益は正当化できますが、積極的に殺すことを選択してよいとする理由はありません。

●
>5) 殺人が肯定され「う」るのは当たり前か
>「殺人が肯定されるケースも必ずある」という意味で「殺人が肯定されうる」とは言っていませんし、
>考えるつもりもありません。私は「殺人が肯定されるという証明も否定されるという証明もない時点では、
>殺人は肯定される可能性も否定される可能性もある」という意味で使っています。
>これについては納得いただけますでしょうか？必要なら証明を試みますが長くなりそうなので。

　そのように「部外者の立場から殺人をどう考察するか」について考えるのであれば、あなたの言うとおりですが、
　それは、死んでいない人間の間で許容が生じうるか、の問題であり、殺人の結果についての判断をさけた議論だと
　考えます。

●
>7) 「間違い」について
>私は「○○は間違いだ」ではなく「○○というのは間違いだ」と言っています。○○を否定しているのではなく、
>「○○という」行為を否定しています。「いう」というのは漢字で「言う」と書いた方がよかったかと反省しています。
>つまりは○○の是非を問題にしているわけではなく「○○と言う」論拠のあるなしを問題にしているのです。

　6)の「理由が必要だ」の流れですね。下に書いたとおり、了解しました。


●
>6) ここが核心
>繰り返しになるかもしれませんが、私は「殺人が肯定される」とは言っていません。殺人を否定するには
>理由が必要だ、と言っているのです。私の「当たり前」に抵抗を覚えるがどう検討していいかわからないのに
>強く結論を言ってはいけない、と言っているのです。
>つきつめると、私の言いたい事は上の事だけです。そしてそれ以外の事は何も言っていません。
>ここは同感だと言ってくださったので満足しています。

　うーん、そうなんですか。確かに、6)には反論するつもりはありません。
　まるっきり関心の方向が違う感じですね。

　但し、殺人を否定する理由は容易にあげられますし、殺人なり人殺しなりの字義に、価値判断を正しく
　対応させなければ、殺人や人殺しなどの判断をしたことにならない、という点は繰り返しときます。

　正直、同感したことに率直に満足したと書いてもらえたのは嬉しかったし、こちらも満足しております。
　同感、としっかり書いておいて良かったです。
　上のレスのところで、前レスからの流れで結構きびしめな感じで書いたのですが、態度に納得できましたので、
　きびしめのところは、間引いて読んでくださるとありがたいです（できれば、内容も検討してもらえると
　嬉しいですが、まあ、悪さを志向する心理みたいなものがないなら、ちょっとした見方の趣味の問題として
　こちらも納得できるので、あまりうるさく言うつもりもありません）。

　意見の相違や、若干腑に落ちない点はありますが（お互い様でしょうね）、よい形で終わって良かったです。

まず、原文を引用しないのには理由があります。それは、原文を引用するとどうしても相手の文章の字面だけを見た叩き合いになってしまうからです。私はあなたの反論の文章のアラを見せつけたいわけではありません。
それから、議論において推測は無用ではないと考えています。相手の言っている事を推測するという行為は、相手の言っている事を理解しようとする行為です。ですから、あなたも私の言っている事を推測していただけませんか？それが当っているなら「当っています」間違っているなら「間違いです」と言い合うことにしませんか？そうすればもっと効率的にお互いの意見を理解することができると思います。

----
1) 価値観について
私は、価値観については(意外に思われるかもしれませんが)相対主義の立場をとっています。つまり、ある行為や状態が良いか悪いかは時と場合によって変わるもので、一概に良いとか悪いというのは決められない、という立場です。
つまり、「殺人が良いか悪いか」という質問には「時と場合による」としか答えられず、この質問に答えるには「○○という場合において」と限定をつけてもらわないといけない、という立場です。
こういう立場に立った上で、前提もつけずに良い悪いを論じるのは意味がない、という主張です。

もしあなたがそうではなく、「殺人は絶対に悪い」という立場をとられるのでしたらそれも結構です。これは、単に「良い」「悪い」という言葉の定義が食い違っているだけの話ですから。私は言葉の定義自体には興味がありません。

ただ、相対主義をとっていると一ついい事があります。それは「いい事はするべきであり、悪い事はするべきでない(あるいは、いい状態になるよう、悪い状態にはならないよう努めるべきである)」という規範が持てることです。規範というよりは定義です。相対主義の私にとっては、「それはいい事か」という問いと「それはするべきか？」という問いはイコールなのです。
それに対して、絶対主義をとっていると「いい事だけどするべきでない事」「悪い事だけどするべきである事」が存在します。とすると、物事に対して良い悪いを定義したところでそれは実際の行動に対して何の役にも立たないんじゃないか？殺人が悪い事だったらどうなるわけ？なんでそんな無意味でどうでもいい事をいちいち議論してるの？と相対主義の私は思うわけです。

例えば「側溝に落ちている10円玉を着服する」のは(窃盗かどうかは置いといて)悪いことでしょうか？良いことでしょうか？あなたが「悪い」という意見なのはわかりましたし、それがおかしいと言うつもりもありません。
しかし、本当に悪いのでしょうか？10円玉を着服しなければ、10円玉は泥に埋もれたままそのうちどこかへ流されてしまいます。大げさに言えば、我々人類の作り出した富がむざむざ見捨てられて喪失してしまうのです。それを救う事は我々人類全体の利益になります。そんな行為が本当に悪い行為なのでしょうか？それとも悪い行為だけどした方がいいのでしょうか？それとも良い行為なのでしょうか？そもそも「悪い行為」って何なのでしょうか？あなたはどう思われますか？
私の立場では、それは良い行為です。そしてそれは単に「利益になるから」という理由と「良い行為とはその状況において利益の方が損害より大きくなる行為である」という定義からくるものです。

2) 価値を利益に置き換える事
「失う利益があるから人殺しはよくない」という論法は相対主義者の論法であり、絶対主義者の論法としては適切ではありません。なぜなら、「失う利益がなければ人殺しはいい」という結論になってしまうからです。
この論争では絶対主義者は「いかなる場合においても失う利益はある」という事を証明しなくてはなりません。それに対して、相対主義者は「失う利益がない事もある」という事すら証明しなくてもいいのです。絶対主義者が証明できなければ、それは自動的に相対主義者が正しいという事になります。相対主義者は「そんな証明は無意味だからどうでもよい」という立場だからです。
絶対主義者がいくら「○○だから失う利益はあるんだ」と言っても、「じゃあ○○でなければいいのか？」と反論できます。それがどんなに現実離れしたレアケースであってもかまいません。なぜなら「いかなる場合においても」と言ってしまっているからです。
例えば、
> 本人が死にたがっている、は、結果としての死をある時点で指向している事を指しますが、これは他人に殺されてもいい、ということを意味しません。
では、本人が「他人に殺されてもいい」と思っていたら人殺しはいいのでしょうか？
> また、その時点で相変わらず志向していることを保障しません。
では、本人が相変わらず志向していたら人殺しはいいのでしょうか？
> さらに、仮に殺される時点で死にたがっていたとしても、死の結果に伴う痛覚や可能性が失われることについて、全面的に良いと判断するのは困難です。
「困難」という事は不可能だと言っているわけではないので、それが良いと判断されるケースがある事を完全に否定してはいません。
このように、簡単にいくらでも反論が書けてしまいます。

私は「だからあなたの言っている事は間違いだ」と言うつもりはありません。論法がよくないと言っているのです。別の論法をとるべきなのです。

---
おそらく納得いただけたとおり、私は人殺しの是非については扱っていませんし、扱うつもりもありません。これらを論ずるには「良いというのはどういう事か」という定義が必要です。
私の「良い」という言葉の定義は上で述べた通りです。そしてこの定義に従うと、(状況を限定しないで)人殺しの是非を論じるのは無意味な事です。だから興味はないと書いたのです。
あなたの定義では「良い」というのはどういう事ですか？それを明らかにしない限り、この話はこれ以上前へは進まないと思います。

もちろん、この問題はひどく難しい問題ですので、答えていただかなくても結構です。「善悪を述べるのは簡単に見えて実は難しい」という結論だけでも十分得るものはあったのではないかと思います。

　　1)あなたが、価値相対主義を標榜されることは、意外ではありませんが、
　　　あなたは、価値相対主義を構造的に絶対化しているという意味で＜価値絶対主義＞者です。
　　　これについては、No.165末尾参照。私は＜価値相対主義＞者です。
　　　価値相対主義を構造的に絶対化する＜価値絶対主義＞と、＜価値相対主義＞は、対立関係にありません。
　　　機能上、どこで歯止めをかけるかが異なります。
　　　
　　　前者は、「絶対」的に価値の相対性を結論し（「～が良いか悪いか」には「時と場合による」としか答えられないとする）
　　　抽象的事実の考察において、一般性を「何らかの意味で」構築する用法を確立（しようと）しない立場です。
　　　後者は、相対的視点をとることについてのみ、一般性を主張し、具体的価値判断においては、構造的な絶対化が
　　　不可避である認識に立ち、その絶対化の繰り返し（あらゆる現場と、それへの認識という現場）において、
　　　言葉の用法上・用例上の意味を明確化し、判断の一般性を支えようとする立場です。

　　　それから、私を価値絶対主義者に仕立てたようですが、私は価値絶対主義者ではありません。
　　　＜価値絶対主義者＞でもありません。私が「殺人は絶対に悪い」と記述するとき、その記述は私の文脈の中で、
　　　＜価値絶対主義＞的に機能していません。私は、視点を並立させることを、常に前提としているからです。
　　　私はあくまで＜価値相対主義者＞です。そこから一般性を支えるやり方について述べています。
　　　一般性を毛嫌いしているのでなければ、私が相対主義者であるのは、文面上明らかです。
　　　ちょっと読めばそういう記述にあたりますから、いちいち指摘しません。

　　　さらに「いい事はするべきであり、悪い事はするべきでない(あるいは、いい状態になるよう、悪い状態には
　　　ならないよう　努　め　る　べきである)」という規範が持てること」を、メリットとしてあげ、さらに、
　　　相対主義について「相対主義の私にとっては、「それはいい事か」という問いと「それはするべきか？」
　　　という問いはイコール」とされており、これは、一見価値中立的に見えますが、実際には、この選択が
　　　具体的決定に適用されたときに、価値的な偏りを生じます。なぜなら、①判断対象として「される」という
　　　観点が入っていないため、価値相対主義ないし＜価値相対主義＞的に、正しく視点が並立されておらず、
　　　②利己的能動的価値判断のみが論点とされ、③利他的受動的決定引き受けの価値判断が捨象されており、
　　　結果、④②を③より優先させる、というメタレベルの価値判断に、偏りが生じるからです。また、②と
　　　③の判断は、価値相対主義・＜価値相対主義＞の考えに従うならば、並立させられなければいけないのに、
　　　判断対象を能動性に限定することで、④の判断結果が③の判断結果そのものとされる場合が極めて多いです。

　　2)>「失う利益があるから人殺しはよくない」という論法は相対主義者の論法であり、絶対主義者の論法としては
　　　>適切ではありません。なぜなら、「失う利益がなければ人殺しはいい」という結論になってしまうからです。

　　　私は絶対主義者ではありませんから、全く問題ありません。人殺しの意味を正確に確定するなら、失う利益を
　　　かなりの程度一般化して述べることができ、その認識に至ったとき、どのような記号を当てるかの用法も、
　　　議論によって相互了解を得ていけばいいと考えるからです。絶対とか普遍とか一般とかの意味を確定的に解する
　　　根拠はありません。

　　　>この論争では絶対主義者は「いかなる場合においても失う利益はある」という事を証明しなくてはなりません。
　　　>相対主義者は「失う利益がない事もある」という事すら証明しなくてもいいのです。
　　　>絶対主義者が証明できなければ、それは自動的に相対主義者が正しいという事になります。
　　　>相対主義者は「そんな証明は無意味だからどうでもよい」という立場だからです。

　　　ここでの絶対主義＝一般性を主張すること、においては、「絶対」性を担保する必要性はありません。なぜなら、
　　　そんなものはそもそもないからです。これは、過去の哲学者が作り出した負の遺産です。現在では、
　　　「絶対」という抽象化（絶対という言葉、ではない。絶対という言葉の理解を、＜価値相対主義＞的観点から
　　　構築できないわけではないし、そうした試みを否定する「絶対」的根拠は存在しない）は、一方論者の特殊的
　　　正当性の強調のために、もう一方の論者に体よく押し付けて、議論を有利に進める機能しか果たしていません。
　　　あなたが嬉しそうに相対主義の利点を語っているようにです。実際の実益は、ずばり言ってしまえば、
　　　iwatamさん（のような立場）が、政治的・価値的言論において、利己的立場を推し進めるのに都合がいいと
　　　言う点にしかありません（そうであるから、直ちに問題がある、とはしていません）。

　　3)>私は「だからあなたの言っている事は間違いだ」と言うつもりはありません。
　　　>論法がよくないと言っているのです。別の論法をとるべきなのです。

　　　あなたは、クチでは論法の話をしていますが、実質的には、論法の話などしていません。先に述べた、
　　　相対主義についてのコメントを参照。あなたは、絶対・絶対主義という言葉が、常に「絶対」的に機能することを
　　　根拠として（これには根拠が無い）、相手が文脈を通じて構成していこうとしている絶対性を、一方的に否定する
　　　ためのレトリックとして使っています。これは、論法の話ではなくて、相手の言論に対する高度なレッテル張りの
　　　技術論です。

　　最後の段落

　　　>おそらく納得いただけたとおり、私は人殺しの是非については扱っていませんし、扱うつもりもありません。
　　　>これらを論ずるには「良いというのはどういう事か」という定義が必要です。
　　　>私の「良い」という言葉の定義は上で述べた通りです。そしてこの定義に従うと、(状況を限定しないで)
　　　>人殺しの是非を論じるのは無意味な事です。だから興味はないと書いたのです。
　　　>あなたの定義では「良い」というのはどういう事ですか？それを明らかにしない限り、この話はこれ以上
　　　>前へは進まないと思います。
　　　>もちろん、この問題はひどく難しい問題ですので、答えていただかなくても結構です。

　　　人殺しの是非について扱う「気が無い」かどうかと、現に扱われたと判断しうるかどうかは別です。
　　　判断主体は、あなたを含めた議論を参照する全ての人それぞれです。

　　　良い、は、（少なくとも）被害を扱う文脈では、ある状態が受け入れられること、程度です。
　　　私は、原理的に確定的定義はなしえない（なされていない）としている（No.159冒頭）ことを、
　　　ここで改めて確認します。また、定義は用例から抽象され、抽象化の段階で前述の意味で「絶対」的抽象を
　　　なすことはできません。絶対的抽象をなすことは「可能」ですが、そこで「絶対」性を暗に前提するふるまいは
　　　許されません。「絶対」性は、文面から誰でも気楽に判断できるようなものではないので、この点について、
　　　私が何を言ったのか、多分理解してもらえないだろう、と思っています（実際、すぐ上の文章は圧縮されすぎで
　　　極めてわかりにくいことを認めます）。

　　　>「善悪を述べるのは簡単に見えて実は難しい」という結論だけでも十分得るものはあったのではないかと思います。

　　　善悪を述べることはある程度以上の年齢の者には簡単です。結論を述べればいいだけです。
　　　根拠もわりと簡単です。視点を位置付け言葉に反映させていく作業が難しいのです。そして、これは
　　　善悪を述べること、つくることの難しさではありません。言葉の難しさです。

　　　これで、私からのレスは終わります。お疲れ様でした。

上の最後の文章、フォームがおかしくなってしまいました。見苦しくなってしまい、すみません。

どうも、図形モードで入力したあと、修正の際に通常モードで入力してしまうと、
正しいパスワードでも修正できなくなってしまう（パスワードロックがかかる）ようです。
不具合かもしれませんので、確認してみてください。もし違っていたら、ごめんなさい。

1)
つまり、「殺人は絶対に悪い事だけど時と場合によっては悪いとはいえない事もある」という意見なのでしょうか？言っている内容はわかりますしそれには同意しますが、これは「絶対」という言葉の使い方が間違ってはいませんか？「殺人は普通は悪いことだけど時と場合によっては悪いとはいえない事もある」というのならその通りだと思います。
私は「殺人は普通は悪いことだけど、それが殺人だからといってすべて悪いとは言えない」といっています。「殺人は絶対に悪い」というのは「どんなxをとってみても、xが殺人ならxは悪い」という主張です。そんなことは言えないというのは同意見だと思ってていいでしょうか？
要は「絶対」という言葉の使い方の問題だと思っています。

私が述べたのが利己的視点だけで利他的視点が入っていないというのはその通りです。それは、利己的視点だけでも「全体の利益は自分の利益にもなる」という事実によって利他的視点を入れることができるからです。つまり、利他的視点は公理ではなく、公理と事実から導き出される定理だと言っているのです。他人のことは考えなくても良いといっているわけではありません。
なお、上の意見では行為だけについて書いていますが、同じ論法で状態についても同じことが言えます。

2)3) については難しい言葉が並んでいるのでバカな私にはよくわからないのですが、要するにここについてはあなたも私と同意見だということなのでしょうか？
私は、この論法は一方論者が議論を有利に進めるような論法にしかなっていないから、こういった話の進め方は良くないといっています。さらに言えば、このように一方論者につけ入る隙を与えてしまうような話の切り出し方はよくない、と言っています。

----
最後に、私はあなたの意見はその通りだと思っています。私の意見はあなたの意見とほぼ同じだと思っています。ただあなたのように難しい言葉をいろいろ知っているわけではないので、たどたどしく語ることしかできないのです。

あなたが私の文章から私の言っていないことを勝手に読み取ることはあるかもしれません。それは私の文章のつたなさが原因であり、あなたの責任ではありません。しかし、それを元に「あなたはこう言っているだろう。それは間違いだ」と言われても、私は「そんなことは言っていない」としか言えないのです（これを私は「興味がない」と表現しました）。そして、あなたがどこをなぜ誤解したかを探るしか方法がないのです。その意味で、私の主張がどういうものだと理解しているのかを言ってくれなかったのは残念です。
（「わたしにその気がないかどうかと、現に扱われたと判断しうるかどうかは別」という発言に対して言っています）

正直言って、あなたの文章は難解すぎて私のようなバカにはよくわかりませんでした。「お前のようなバカは相手にならん」とおっしゃるのはもっともです。しかしバカなりにいろいろと解釈し、結局言っている事にほとんど違いはないのではないかという結論に至りました。この結論が正しいかどうかを判断する機会がなさそうなのは残念ですが、それでも私はいろいろと得るものがありました。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。あなたの側にも何か得るものがあれば幸いです。
もし何か言いたいことがありましたら、またいつでもいらっしゃってください。

価値相対主義については本筋と関係ないので別にします。

実は「価値相対主義」についてはあまり自信がありません。高度に哲学的な話題ですし、その分野できちんと勉強したわけでもありませんので。
なので、「価値相対主義」そのものを否定しないように細心の注意を払ったつもりです。
「価値相対主義は間違っている」とは書かず、「絶対的な真理などないというのは自己矛盾」あるいは「価値相対主義が正しい」というのは間違いだと書いています。価値相対主義というものが何かという問題は置いといて、価値相対主義を絶対視するのはおかしい、と言っているのです。ついでに言うと「議論の場では」という限定も付けています。
私は例の自己矛盾が「価値相対主義」なのかどうかには興味がありません。これは単に言葉の問題であり、私にとってはどちらでもいいことです。

>価値相対主義というものが何かという問題は置いといて、価値相対主義を絶対視するのはおかしい、
>と言っているのです。ついでに言うと「議論の場では」という限定も付けています。

　これには、全く同感です。私はこの意味で、価値相対主義の文章はよい、と書きました。

>私は例の自己矛盾が「価値相対主義」なのかどうかには興味がありません。これは単に言葉の問題であり、
>私にとってはどちらでもいいことです。

　実は私もあんまり興味ないです（おいおい）。確かに、あなたが批判した意味での「価値相対主義」者を
　＜価値相対主義＞者と呼ぼうが、＜価値絶対主義＞者と呼ぼうが、まあ、どうでもいいと言って
　言えなくも無い話ですもんね。大事なのは、意見を構造的に絶対化する考え方・やり方がまずいという
　点について、きちんと指摘できるか、合意に至れるか、という点ですから。

　長い文章に丁寧に応じてくださってありがとうございました。お疲れ様でした。

iwatam's serverのゲストブック 過去ログ

iwatam's serverのゲストブック過去ログ